『財界』誌連載コラム 『英語で夢を見る楽しみ』 寄稿者のブログです。往年のベストセラー『英語屋さん―ソニー創業者・井深大に仕えた四年半』と『英語屋さんの虎ノ巻』(集英社新書)はKindle (Amazon)などの電子書籍でお読みいただけますので引き続きご愛読のほどお願い申し上げます。2008年7月から10年余りにわたって実務翻訳で見つけた訳語を「なるほど!訳語発見 ~英語翻訳の現場から」と題してこのブログに載せてまいりましたが、思うところがあり2018年8月に改題しました。
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2019年10月29日 (火) | 編集 |
昨日トランプ大統領が発したHe died like a dog.をテレビニュースの字幕では「犬のように死んだ」と訳していたが、大統領の言葉としてはいささか相応しくないように感じた。ここは「犬のように~」という直喩ではなく「惨めな死に方をした」という慣用句として訳すほうが語弊を招かない。

改めて映像を見ると、トランプ大統領はHe died like a dog.の直後にHe died like a coward.と続けており、それをまとめて解釈すると「彼は臆病者に相応しい惨めな死を遂げた」あたりが適訳かと思う。

それで思い出したが、同時通訳の泰斗、村松増美先生(故人)からこう教わった。「大統領の言葉は大統領らしく訳すこと」

ツイッター投稿記事より転載)



映像出所: 'He died like a dog, he died like a coward:' Trump on death of ISIS leader Abu Bakr al-Baghdadi as edited by Global News ― 2019/10/27 公開 @YouTube
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2019年10月21日 (月) | 編集 |
手元の辞書を引くと、亡くなった人に勲章を与えるという意味で「追叙」(posthumous honor)という言葉が出てきます。これをGoogleに入れてみると、検索結果数は多いのですが、どちらかというと外国や過去に関する用例が多く、今日の日本語ではあまり使われていないようです。「没後叙勲」または「死後叙勲」のほうが一般には通じやすいと思います。

なお賞勲局のホームページで調べたところ、公式には「死亡叙勲」と呼ばれています。死亡時に叙勲申請するためでしょうが、日常語としてはほとんど見かけず、自分で使うにはちょっと違和感があります。

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2019年09月02日 (月) | 編集 |
辞書でよく見かけるprotesterの訳語は「抗議者」「抗議する人」ですが、この言葉は街頭に繰り出して抗議運動を繰り広げる人々を指してよく複数形(protesters)で使われており、その場合は日本語では普通「[抗議]デモ参加者」とか「デモ隊」と言います。Googleで検索してみると、報道記事ではprotestersのほうがdemonstratorsよりも頻繁に使われていることが分かります(たぶん後者より短いので見出しなどに使いやすいからでしょう)。

(例) pro-democracy protesters (民主主義支持デモ参加者)
    anti-government protesters (反政府デモ参加者、反政府デモ隊)
    Hong Kong police were seen beating protesters
    (香港警察がデモ参加者を殴打しているのが目撃された)



映像出所: Guardian News― 2019/08/31 公開 @YouTube
※過激な暴力場面がありますので視聴の際はご注意ください。

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2019年08月28日 (水) | 編集 |
催涙ガスは英語では一般にtear gasと呼ばれています。英文報道では警察がデモ隊を駆逐するのに使うそれを riot gas (暴徒鎮圧用ガス)と言い換えている例を見かけますが、日本語ではそれも普通の文脈では「催涙ガス」と呼んでいます。

(例) tear gas canister (催涙[ガス]弾)
    tear gas gun (催涙ガス銃)

なお、個人が護身用に携行する缶入りの刺激性液体スプレーを英語では普通pepper sprayと言います。日本語にそのまま訳せば「唐辛子スプレー」ですが、「催涙スプレー」と呼んだほうが分かりやすいと思います。

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2019年08月21日 (水) | 編集 |
この6月から香港で続く抗議デモに参加する学生が戦術理念として往年の映画俳優ブルース・リー(Bruce Lee)の言葉 Be [like] water を引用しているそうですが、それを伝えるニュース映像の字幕が「水のようになれ」となっていました。その意味には違いありませんが、中国系という彼ののバックグラウンドを考えるなら、この言葉はおそらく老子の「上善水の如し」を踏まえたものでしょうから、私のような古い世代の日本人には「水の如くあれ」(水のごとくあれ)と文語調に訳したほうがしっくりします。

YouTubeで検索してみたところ、その言葉の出所と思われる古いインタビュー映像が出てきました。その中で彼は Be formless, shapeless, like water. などと言っていますが、その件は「水は方円の器に従う」という古い諺を思い出させます。「水のように柔軟であれ」という意味で言われているこれらの言葉は東洋というか漢字文化圏に共通の発想なのかもしれません。

香港の学生が老子ではなく香港映画の伝説的な俳優から引用したあたりは、その昔ブルース・リーの 『燃えよドラゴン』 シリーズに熱狂した世代に属する私も共感できます。



(映像はYouTubeから/画像リンク先はAmazon ※画像は本文とは関係ありません)
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