『財界』誌連載コラム 『英語で夢を見る楽しみ』 寄稿者のブログです。往年のベストセラー『英語屋さん―ソニー創業者・井深大に仕えた四年半』と『英語屋さんの虎ノ巻』(集英社新書)はKindle (Amazon)などの電子書籍でお読みいただけますので引き続きご愛読のほどお願い申し上げます。2008年7月から10年余りにわたって実務翻訳で見つけた訳語を「なるほど!訳語発見 ~英語翻訳の現場から」と題してこのブログに載せてまいりましたが、思うところがあり2018年8月に改題しました。
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2020年06月10日 (水) | 編集 |
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにソーシャルディスタンシング (social distancing、対人距離の確保; 既出記事参照)や密閉空間における密集、密接な会話や発声(いわゆる三密)の回避が求められるようになり、私たちの日常生活が一変しました。そのような生活行動の変容を日本語で「新たな日常」 (新しい日常)と呼んでいます。

英語では一般に new normal と言いますが、この言葉はリーマンショックや9.11同時多発テロの後にも使われていたようです。その意味では「ニューノーマル」というカタカナ語や「新常態」という漢語に訳されていますが、今日のコロナ禍に関する文脈では一般には言いません。両者をはっきり区別したい場合は後者を post-coronavirus new normal (コロナ後の新たな日常)などと呼ぶといいでしょう。

日本政府の専門家会議が提唱した「新しい生活様式」はその語感の悪さもあって、コロナ後の生活変容を広く指す言葉としては定着していません。多くの文脈においては当局が示した行動指針という限定的な意味でしか使われておらず、「新たな日常」の下位概念に留まっています。東西冷戦時代に育った私などはかつて共産圏の政府が市民の行動を隅々まで監視していたことを思い出すのか、「新しい生活様式」が唐突に発表された時には嫌な印象を受けました。

これもお役所的発想なのか、コロナ対策担当閣僚の記者会見の席でその「新しい生活様式」を「スマートライフ」という珍妙なカタカナ語で言い換えようとしていましたが、すぐに立ち消えました。この言葉はすでにネット家電を導入した新生活を指して使われているので、今さらそれにコロナ後の新たな日常という別の意味を与えるのは不適切だと考えます。

「新たな日常」と呼ぶか「新しい日常」を使うかは個人の好みによって分かれるところでしょう。最近のテレビ報道では後者がやや優勢になり始めたようですが、私の好みで言うと前者のほうがしっくりします。ただし「新たな日常」という言葉は私の場合(コロナ禍に関係なく)個人的な生活感の大きな変化を指す言葉として使ってきたこともあり、それと区別するためにはコロナ後のほうは「新しい日常」と呼ぶのもいいかもしれません。

(画像リンク先はAmazon ※画像は本文とは関係ありません)
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